芳名録から
展覧会の会場などには芳名録−お名前や住所を記すサインブックがよく備えられていますね。規模の大きい美術館や博物館ではあまり見かけませんが、画廊での個展などにはいつも使われています。
小さな施設の「おおすみ歴史美術館」は開館以来12年間にわたり、芳名録を備えつけています。来館者のうち、一部の方の記帳とはいえ「どこから、どういう方がお立ち寄り頂いたか」を物語る当館の貴重な資料です。
さて、今年3月と4月の芳名録をめくってみました。
3月は51名、4月は43名の方が記帳されています。それぞれを地域別に分けてみますと、まず3月は近畿地方がトップ(12名)、次いで九州(9名)と地元の山口県(9名)、そして関東地方(8名)の順。4月は山口県がトップ(13名)、次いで九州(8名)、北海道(6名)。毎月の分もほぼ同様で、ありがたいことに来館者は全国に広がっています。もっとも全国に知られた名湯、湯田温泉に来られた方が足を伸ばされたわけで「親の七光り」にあやかったと申すべきでしょう。一方、当館がいささかなりとも、湯田観光のお役に立っていることは嬉しい次第です。
全国からの来館者の皆さんとふれあい、書画のつたない解説や山口の歴史、観光の説明に明け暮れる日々ですが、皆さんから教えられることが多く、また意外な出会いも少なくありません。
4月6日のことです。芳名録に「北海道旭川市・・・」と記されたご夫妻がいらっしゃいました。
「旭川といえば有名な旭山動物園がありますね。その人気の秘密は?」とおたずねすると、ご夫人が熱心にお話下さいました。市民が誇りに思う施設なんてステキですね。
ところが、その2週間後の19日、来館者のご夫妻がやはり「旭川市・・・」と芳名録に記されました。
「旭川の方ですか。ついこの間もそちらの方が来られましてね、旭山動物園のことをお聞きしたばかりです」と私が言うと、ご夫人が「あの・・・夫がそこの園長です」と答えられ、びっくり。山口には講演でいらっしゃったとのことでした。
帰られるお二人の後ろ姿を見ながら、改めて芳名録はかけがえのない財産だとの思いをかみしめました。
おおすみ歴史美術館・江戸康尹