新村出(しんむらいずる)の短冊
霜月(しもつき)の11月は文化の日、七五三、新嘗祭(にいなめさい)などの行事があり、日一日と秋が深まり、冬の足音が聞こえてくる季節です。
「山口の先人の足跡をたどる」を基本方針とする当館の展示はほとんどが山口の書画、それも幕末維新関係が中心です。さほど変わりばえはしませんが、10月末に多少展示品を入れ替えました。
その一つに新村出さん(1876−1967)の和歌短冊があります。どこの、どういう人?と首をひねる方もおられるでしょうが、新村さんは山口市生まれの言語学者。広辞苑を編さんされたすごい学者です。文化勲章の受章者であり、歌人としても知られています。
掛軸になっている新村さんの和歌は文化の日をうたったもので、歌の前に「文化の日に」とタイトルを記しています。ご紹介しましょう。
文化の日に
多知波奈(たちばな)の
花のみしるし賜(たまわ)りぬ
明治のみよ(御代)を慕(した)う秋の日
文化の日は昔は明治節といい、明治天皇の誕生日を祝う記念日でしたね。
話は変わりますが、小さな歴史系のミュージアムである当館には、時折熱心な歴史ファンが訪れます。11月初旬に来館された40年配の女性は大阪から夜行バスで早朝に山口市着、市内の各ミュージアムや維新史跡―藩庁門、木戸神社、周布政之助の墓などを回り、午後の夜行のバスで帰られました。歴史ファンのパワーはすごいですね。
この女性は木戸孝允ファンとのこと。展示中の木戸の書に目をこらしておられました。最後に新村さんの和歌を口ずさみながら帰途につかれました。
おおすみ歴史美術館 江戸康尹